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損保ジャパン日本興亜美術館『吉田博展 山と水の風景』

再来月より「吉田博展 山と水の風景」が東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館にて開催されます。

皆さんは「吉田博」という風景画家をご存知ですか?

幼い頃から常にスケッチブックを手放すことはなく、負けず嫌いな性格だったという彼は、

17歳で入門した画塾でももう勉強を重ね、その姿は「絵の鬼」と呼ばれるほどだったそう。

初めは水彩画や油彩を主に描いていた吉田。

自分が所属する画家のグループとライバルにあたるグループがもてはやされ、国費で当時の美術の本場であるヨーロッパに留学していくのが快くありません。

そこで持ち前の負けん気で友人の画家と2人、知り合いを頼って片道切符でアメリカで。

そこでデトロイト美術館の館長の心を見事掴み、そのまま個展を開催してしまっているのだからすごいんです。

人気につき、アメリカ国内巡回展も開催し大成功。当時の小学校教諭13年分の給料にあたる1000ドルを見事稼ぎ、稼いだお金でヨーロッパにもわたり、凱旋帰国をするというなんともかっこいい人なのです!

そんな吉田は、もちろん油彩画家としても成功を収めますが、私はその版画作品に驚きを隠せません。

まるで私たちがよく知っている版画に見えず、現代アニメーションや、漫画の背景のように見え、本当に細やかで美しいのです。

吉田がアメリカへ行った際に、低俗な幕末の浮世絵が人気だったのを見て、負けん気に火がついてしまったのが、彼が本格的に版画に打ち込むようになったきっかけだそうです。

「自分が本物の浮世絵を見せてやる」と言わんばかりに木版画制作に取り組んでいきます。

幼い頃から鉛筆画で培ってきた繊細で的確な線描と、水彩画・油彩画で培ってきた奥行きが結実して、独特な世界観を形成しているのです。

浮世絵と言われて連想するものといえば、ものの配置で奥行きを表現しながらも、どこか抽象的で平面なものかもしれません。しかし、吉田博の木版画には、線の描写だけをみてもリアリティなのに、吸い込まれそうなほどの奥行きがあります。

独特の奥行きにはもう一つの理由があります。それは色の重ね方。

木版画は、版を重ねながら色をつけてゆき、その数は通常10版ほど。しかし、彼は微妙な色の違いを出すために平均30数度、多い時には90数度も版を重ねていたのだとか……!

展覧会については5月20日発行号の「FLYING POSTMAN PRESS」、関東版にも掲載中です!

本展は7月8日~8月27日まで。

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